今回は、97番の大防風湯(だいぼうふうとう)です。

保険適応は、「下肢の慢性関節リウマチ、慢性関節炎、痛風で、関節がはれて痛み、麻痺、強直して屈伸しがたいもの」となっています。

全部で15種類の生薬で構成されています。

当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)は四物湯であり、血を補う働きがあります。

人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)は、気力・体力を補う基本処方の四君子湯から茯苓(ぶくりょう)を除いた形になっています。

黄耆(おうぎ)も体力を補い、汗を抑える効果があります。

防風(ぼうふう)と羌活(きょうかつ)は痛みを発散する働きがあります。

杜仲(とちゅう)、附子(ぶし)も鎮痛効果があります。

牛膝(ごしつ)は血のめぐりを改善する効果があります。

全体として、関節痛や関節リウマチの経過が長く、体力が衰え、顔色不良で貧血傾向がある患者さんに適したお薬に仕上がっています。

ただし、熱感を伴うような強い痛みを抑えることは期待できません。

杜仲は、トチュウ科のトチュウの樹皮を原料とする生薬です。

ゴム状で粘り気があり、五臓の「腎」のはたらきを補う作用があり、足腰の痛みや筋肉の脱力を改善する効果があります。

健康茶の杜仲茶は、トチュウの葉が用いられ、こちらは滋養強壮や降圧作用が期待されます。

トチュウ

整形外科領域の漢方薬のまとめです。

18番 桂枝加朮附湯 ⇒ 体力がない人の足の痛みやしびれ

28番 越婢加朮湯 ⇒ 熱や炎症のある関節痛

52番 薏苡仁湯 ⇒ 冷えて血のめぐりも悪い方の関節痛

53番 疎経活血湯 ⇒ 腰痛や坐骨神経痛

63番 五積散 ⇒ 冷えに伴う腰痛、神経痛

68番 芍薬甘草湯 ⇒こむら返りの筋肉痛

78番 麻杏薏甘湯 ⇒ 関節が冷えて水分が滞るために悪化する痛みに

88番 二朮湯 ⇒ 冷えがある方の五十肩

89番 治打撲一方 ⇒ぎっくり腰や打撲

97番 大防風湯 ⇒貧血があり、体力のない方の慢性的な痛みに

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

漢方治療のファーストステップ 松田邦夫・稲木一元共著