今回は、53番の疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。

腰痛や座骨神経痛などに使用されるお薬です。

全部で17種類もの生薬が含まれています。

当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)。芍薬(しゃくやく)地黄(じおう)で構成される四物湯がベースとなっています。

茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、防已(ぼうい)は水の滞りを改善する生薬です。

桃仁(とうにん)、牛膝(ごしつ)は、血の滞りを改善します。

防風(ぼうふう)、羌活(きょうかつ)、白芷(びゃくし)、威霊仙(いれいせん)は痛みを発散させる働きがあります。

竜胆(りゅうたん)、生姜(しょうきょう)、陳皮(ちんぴ)は胃腸の保護のために配合されています。

甘草(かんぞう)は、からだのバランスを整える目的に使われています。

全体として、血の不足、血や水の停滞によって全身の冷えがおこり、筋肉がひきつれて痛んだりしびれたりしている時に効果が期待できる漢方薬です。

疎経活血湯の「疎」という漢字は、「疎通」や「疎水」などの熟語に使われるように「間をひろげて通す」という意味合いもあります。

「経」は経絡(けいらく)の経です。

ここで経絡について勉強したいと思います。

経絡は、経脈と絡脈の2種類があり、いずれも人間の気(体の中のすべての機能を支える生命エネルギーのようなもの)の通り道です。

気は、血(血液や栄養分)と水(血以外の液体)と結びつきながら体のすみずみまで巡っていると考えられています。

ややこしいことに経絡は、西洋医学の解剖学的な血管や神経の走行とは全く違って目で見えるものではないとされています。

経脈は、人体の縦方向に走る本線であり、絡脈は横方向に走っています。

途中に、気の流れを調整する中継ポイントがあり、経穴(けいけつ)と呼ばれています。

いわゆる「ツボ」です。

足や手が起点となる経脈は12本あり、それぞれが色々な内蔵の調子と関係しています。

たとえば足太陰脾経という経脈は、胃腸の働きと結びついています。

足太陰脾経上の膝下の内側にある陰陵泉(いんりょうせん)は、足のむくみを取るツボとして有名ですが、下痢症状を改善する効果もあると言われています。

 

引用:https://harikyu-jinendo.jp/sozai02.html

 

東洋医学では、「気通じざればすなわち痛む」という鉄則があります。

経絡での気の動きが悪くなり、血や水も滞ると「冷え」が起こります。

冷えたところには痛みが生じ、痛くなると運動不足になって体重が増え、ますます足腰の負担が強くなってしまいます。

疎経活血湯は、この悪循環を断ち切るための処方となり得るのです。

薬以外でも、気の流れを良くするための色々な手段があります。

適度な運動、マッサージ、ストレッチ、ヨガ、鍼灸、温浴などです。

これらを有効に組み合わせて、鎮痛薬を使わずにつらい痛みから解放できるといいですね。

 

白芷は、セリ科のヨロイグサの根が原料の生薬です。 抗炎症作用や鎮痛作用があるとされています。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

基本がわかる漢方医学講義 日本漢方医学教育協議会

漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著