越婢加朮湯
今回は、28番の越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)です。
麻黄、石膏、蒼朮(あるいは白朮)、生姜、甘草、大棗という6つの生薬からなる漢方薬です。
麻黄は、他の生薬との組み合わせによって多彩な効果を生み出す不思議な力があります。
前回の麻黄湯の項では、麻黄と桂皮の組み合わせにより、体の表面を温め、汗をかかせる作用を紹介しました。
それに対して、麻黄と石膏の組み合わせでは、体表の熱を冷まして、水分を体の内部に引き込み、尿として出す働きにかわります。
したがって熱っぽくて汗をかいている状態が良い適応になります。
出典:Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 P79
越婢加朮湯では、水分をさばく作用のある蒼朮あるいは白朮が配合されていますのでさらにむくみのある状態に効果が期待できます。
生姜、甘草、大棗の組み合わせは、胃腸の調子を整え、過度な脱水を防ぐ働きがあります。
全体として浮腫と炎症が同時に存在する場合に効果を発揮します。
適応病名としては、腎炎、ネフローゼ、関節リウマチがあげられます。
さらにリンパ浮腫や蜂窩織炎、痛風や帯状疱疹の急性期にも応用可能です。
ただし、麻黄が多く含まれるため、心疾患のある患者さんには注意が必要です。
特に心不全が原因の浮腫には使えませんので、病態の鑑別が重要です。
漫然と長期に使用するのも避けた方が良いと思います。
石膏は、硫酸カルシウムが主成分の鉱物ですが、生薬ばかりではなく、壁に使う石膏ボードや白墨(チョーク)、骨折に使うギブスなどに利用されています。
耐熱性、防火性にすぐれる材料として私たちの生活に欠かせないものとなっています。
そういえば妖怪のぬりかべもなんだか冷やっとしている印象がありますね。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著