五積散
今回は、63番の五積散(ごしゃくさん)です。
体が冷えて起こる腰痛や神経痛、月経痛、胃腸炎などに適応のある漢方薬です。
五積とは、気、血、痰、飲、食のめぐりが悪いことを意味します。
五積散は、この五つの不調を改善するためのお薬という訳です。
16種類の生薬で構成されています。
桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)は、桂枝湯(45番)あるいは桂枝加芍薬湯(60番)の構成生薬と同じです。
体表や、お腹をゆるやかに温める効果があります。
麻黄(まおう)、白芷(びゃくし)は、外気に触れて痛むのを防ぐ働きがあります。
当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)は、血のめぐりを良くする組み合わせです。
桔梗(ききょう)、陳皮(ちんぴ)、半夏(はんげ)は、痰を取り去る効果があります。
漢方では、痰は、気道や鼻腔から出る痰ばかりではなく、「汚れた水分」全般を指し、胃の中にたまった濁った胃液なども含まれます。
蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)は、水(飲とほぼ同意)の滞りを改善します。
厚朴(こうぼく)と枳実(きじつ)は、消化管を動かし、食の滞りを取り去る効果があります。
全体として、からだを温めながら、様々な慢性的不調を穏やかに改善していくお薬となっています。
ただし、麻黄が含まれているので、極度に胃腸が弱い方や、心疾患のある方、妊婦さんには、注意が必要です。
桔梗は、キキョウの根が原料の生薬です。
痰を除く効果があるので、気管支炎や咽頭炎に対するほとんどの処方に含まれています。
「春は菜の花 秋には桔梗 そして、あたしはいつも夜咲くアザミ」
中島みゆきさんのデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」の一節です。
この曲にもあるように、秋の七草の一つです。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
自然の中の生薬 ツムラ株式会社