四物湯
今回は、71番の四物湯(しもつとう)です。
当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)の4つの生薬で構成されています。
当帰は、血を補う作用の他に月経調整作用もあり、女性の不調に良く使われる生薬です。
芍薬は、血を補う作用に加えて、筋肉の痙攣を抑えて、からだの痛みや腹痛に効果があります。
川芎は、からだを温め、血のめぐりを良くする生薬です。
地黄も血を補う作用があり、からだを潤す効果も持ち合わせています。
四物湯は、血が足りない状態(血虚)を改善する基本処方となっています。
血虚の症状は
・顔色が悪い
・皮膚につやがなく、乾燥している
・爪がもろい、髪が薄い
・めまいやふらつき
・目がかすむ
・動悸、息切れ
・月経痛、月経不順
などが挙げられます。
今回は、「血(けつ)」という概念について触れます。
血とは、漢方医学では、「からだをめぐる赤い液体」とされていますので、現代医学の血液とほぼ同じと考えてよいのですが、前回のブログで取り上げた「気」と結びつくことによって、次の2つ重要な働きを担っています。
①からだの臓器に栄養や熱を運ぶ=養営作用
②皮膚や爪、髪に潤いを与える=滋潤作用
この2つの働きが低下すると、様々な血虚の症状を引き起こすわけです。
四物湯は、次のような漢方薬の基本構造として使われています。
四物湯:当帰・芍薬・川芎・地黄
七物降下湯:当帰・芍薬・川芎・地黄・黄耆・黄柏・釣藤鈎⇒体力のない方の高血圧に伴うめまいや耳なりに
温清飲:当帰・芍薬・川芎・地黄・黄芩・黄柏・黄連・山梔子⇒顔色が悪い方の月経不順に
十全大補湯:当帰・芍薬・川芎・地黄・人参・朮・茯苓・甘草・黄耆・桂枝⇒病後の体力低下や貧血症状に
当帰飲子:当帰・芍薬・川芎・地黄・荊芥・防風・蒺藜子・甘草・黄耆・何首烏⇒皮膚の乾燥を伴うかゆみに
芎帰膠艾湯:当帰・芍薬・川芎・地黄・阿膠・甘草・艾葉⇒顔色が悪い方の痔の出血に
その他、
荊芥連翹湯⇒顔色の悪い方のにきびや副鼻腔炎に
疎経活血湯⇒体力のない方の腰痛や坐骨神経痛に
なども四物湯を含む漢方薬です。
四物湯に含まれる地黄は、熟地黄と言って、ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を蒸してから乾燥させた生薬が使われます。
からだを温めて潤す効果があります。
ただし、地黄は腹痛や下痢などの症状が悪化させることがあるので普段から胃腸の弱い方や妊婦さんには、注意が必要です。
その場合は地黄を含まない補血薬として、当帰芍薬散や温経湯などが使われる事があります。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
東洋医学 基本としくみ 仙頭正四郎監修
自然の中の生薬 ハンドブック版 ツムラ株式会社監修