今回は、50番の荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)です。

蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃腺炎、ニキビに適応がある漢方薬で、特に青年期の患者さんに良く使用されます。

13種類の生薬が含まれています。

黄芩(おうごん)、黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)は、黄連解毒湯の構成生薬で体の熱を冷ます作用が強い組み合わせです。

当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)は、四物湯の構成生薬で、血液を補い、血のめぐりを良くする組み合わせです。

黄連解毒湯と四物湯が合わさったのが、温清飲(うんせいいん)というお薬で、名前の通り、温める生薬と冷ます生薬が同居している形になります。

こちらは女性の月経不順などに処方されます。

荊芥連翹湯は、さらに、柴胡(さいこ)、薄荷(はっか)、連翹(れんぎょう)、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、白芷(びゃくし)、桔梗(ききょう)、枳殻(きこく)、甘草(かんぞう)が加わっています。

黄芩と柴胡が入っているため柴胡剤の性質もありますので、炎症を抑える働きが期待できます。

薄荷、連翹、荊芥、防風は、発散作用があり皮膚疾患に有効な生薬です。

白芷、桔梗は去痰作用があり、枳殻や甘草は胃腸を守るために配合されています。

全体として、血行を改善しながら、熱を冷まし、皮膚や粘膜の炎症を抑える効能があります。

荊芥はシソ科の植物のケイガイの花穂を乾燥させたものが原料の生薬です。

荊芥連翹湯を検索すると、コロナウイルスに関連した記事が多くみられます。

コロナ発症に対する予防効果の報告もありました。https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/2962

確かに、粘膜の炎症を抑える事によってウイルスの侵入を防ぐ効果が期待できるので、一定数の方には予防効果があるかも知れません。

しかし、強力に体を冷やす効果のある黄連解毒湯の構成生薬が含まれるわけですので、元々冷え性な方が服用すると、さらに体が冷えて体調を崩してしまう可能性も考えられます。

また、柴胡と黄芩の組み合わせは、長期に使用すると肝機能障害や間質性肺炎などの副作用にも注意が必要です。

コロナの予防薬としての漢方薬の使用は一律ではなく、その方の体質を考慮して慎重に薬を選択する必要があると思います。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

自然の中の生薬 ツムラ株式会社

【緊急寄稿】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割 渡辺賢治他 日本医事新報社 2020年4月18日発行

【特別寄稿】COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方ver 2 小川恵子 日本感染症学会 2020年4月17日公開