今回は、46番の七物降下湯(しちもつこうかとう)です。

七物降下湯は、戦後日本の漢方医学の発展に尽力した大塚敬節先生オリジナルの漢方処方で、エキス剤の中でも一番歴史の浅いお薬です。

大塚敬節先生は、著書の「漢方医学」で、ご自分が血圧が高く、のぼせ気味で、眼底出血の既往もあったことから、この薬を考案して飲み続けたエピソードを紹介しています。

特に最低血圧が高い傾向の方にお勧めしています。

構成生薬は、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、黄耆(おうぎ)、黄柏(おうばく)、釣藤鈎(ちょうとうこう)の7種類です。

芍薬、地黄、当帰、川芎は、四物湯という漢方薬と同じ組み合わせで、血のめぐりを改善させる働きがあります。

黄耆は体力を補う生薬です。

黄柏は身体の熱を冷ます作用の他に胃の調子を改善する働きがあります。

地黄がやや胃腸に負担がかかる生薬なので、その副作用を軽減する目的で配合されています。

釣藤鈎は、脳の血管の拡張させて脳の血流を改善します。

加えて精神の安定作用と神経や血管の痙攣を抑える働きがあります。

全体として、体力がなく、血のめぐりが悪くて顔色不良で皮膚が乾燥しているような方の高血圧に伴うめまいやのぼせなどの症状に効果が期待できます。

この漢方薬は、一時期、私の母にも処方していました。

その母は、昨日静かに息を引き取りました。

87歳9ヶ月。

世界一と言われる日本人女性の平均寿命を全うしました。

母の介護は、ヘルパーさん、ケアマネージャーさん、訪問看護師さん、老人施設の皆さんなど、本当に多くの方々に支えて頂きました。

おかげさまで、最期の最期まで、感謝の気持ちを持って旅立ちました。

自分の身体、脳、心、すべてを使い果たした見事な臨終、そして見事な人生でした。

黄柏は、ミカン科のキハダの樹皮を原料とした生薬です。 キハダの木言葉は「寛大」です。

 

参考: 新装版 漢方医学 大塚敬節著 創元社