今回は、106番の温経湯(うんけいとう)です。

手足がほてり、唇が渇く方の、月経不順、月経困難、更年期障害、湿疹などが保険適応となっています。

全部で、12種類の生薬で構成されています。

ベースとなるのは補血剤の代表である四物湯(しもつとう)から地黄を除いた当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)です。

牡丹皮(ぼたんび)は、血のめぐりを改善する働きがあります。

阿膠(あきょう)は止血効果のある生薬です。

麦門冬(ばくもんどう)はからだを潤す効果があります。

呉茱萸(ごしゅゆ)、桂皮(けいひ)、生姜(しょうきょう)はいずれもからだを温める働きがあります。

半夏(はんげ)は気をめぐらして、気分をさっぱりさせる効果があります。

人参(にんじん)は、体力を補う生薬です。

甘草(かんぞう)は水分バランス調整のために配合されています。

全体として、血のめぐりが悪く、からだが冷えても手足がほてり、皮膚や唇が渇いている女性の月経や皮膚のトラブルに適したお薬になっています。

阿膠は、ロバ(ウマの仲間)の毛を取り去った皮や腱を水で煮てできた「にかわ」を乾燥して作った生薬です。

中国の東阿県という所で作ったものが有名なので、阿膠という名前になっています。

血液を補う作用や止血作用があり、月経不順の解消や美容効果があるとされ、楊貴妃や西太后も愛用したと伝えられています。

人気があり、かなり高価な生薬ですので、日本では豚などの哺乳類の皮や骨から作ったゼラチンで代用しています。

いずれにしてもコラーゲンやアミノ酸などが多く含まれています。

漢方薬に使われる生薬は、ほとんどが植物由来ですが、阿膠のように動物や昆虫など植物以外が原料の生薬もわずかながら存在します。

以下にまとめておきます。

阿膠(あきょう):温経湯の他に、芎帰膠艾湯炙甘草湯猪苓湯などに含まれる。

蝉退(せんたい):セミの抜け殻が基原。皮膚のかゆみを抑える作用あり。消風散などに含まれる。

竜骨(りゅうこつ):ゾウやマンモスなどの古代の大型哺乳動物の化石が基原。鎮静作用あり。桂枝加竜骨牡蛎湯柴胡加竜骨牡蛎湯などに含まれる・

牡蛎(ぼれい):カキの殻が基原。鎮静作用あり。安中散桂枝加竜骨牡蛎湯柴胡加竜骨牡蛎湯などに含まれる。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著