消風散
風に逆らう 俺の気持ちを
知っているのか 赤いトラクター
燃える男の 赤いトラクター
それがお前だぜ~
私の学生時代に流行ったCMソングです。
今は亡き小林旭さんの男らしい姿が印象的です。
高校生の時、受験勉強のためにZ会をやっていました。
「風に逆らう男」というペンネームを登録していました。
ごくごく稀な事ではありましたが、成績優秀者の欄に「風に逆らう男」を見つけると小躍りして喜んだものでした。
今回、取り上げるのは、22番の消風散という漢方薬です。
13種類もの生薬で構成されています。
慢性の湿疹や蕁麻疹に効果のあるお薬で、特に熱感があり、ジュクジュクした痒みの強い皮疹に効果があります。
消風散の「風」とは、外界から身体に入り込んだ害なるものによって引き起こされたかゆみなどの異常を指します。
この状態を熱を冷ましたり、湿り気を乾かしたりして改善させることを去風といいます。
消風散の中では、防風(ぼうふう)、荊芥(けいがい)、蝉退(せんたい)、苦参(くじん)、牛蒡子(ごぼうし)などの生薬が去風作用があるとされています。
その他に冷やすばかりではなく、温める作用のある生薬も配合されているので、全体としてバランスの良い漢方薬です。
この中で、蝉退という珍しい生薬について紹介します。
蝉退はスジアカクマゼミという蝉の抜け殻を乾燥して砕いたものを生薬にしたものです。
解熱、発散作用の他に、鎮静作用もあり、かゆみを抑える働きがあります。
それにしても、いったい誰がはじめて蝉の抜け殻を薬に使おうと思ったのでしょうか。
恐るべしです。
さて、今日は3月11日です。
東日本大震災から10年が経ちました。
当院も震災から1ヶ月以上は診療ができない日々が続きました。
とても逆らう事などできない「風」があることを思い知らされました。
今、コロナという恐ろしい「風」が吹きすさんでいます。
なんとかこの「風」のダメージを少しずつでも消していきたいものです。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著