安中散
今回は、5番の安中散です。
こちらも市販薬になっている漢方薬です。
そのまま安中散という名前の市販薬もありますが、その他にも
・武田漢方胃腸薬A
・大正漢方胃腸薬=安中散+芍薬甘草湯(腹痛に効果のある処方)
・太田胃酸 太田胃酸漢方胃腸薬II=安中散+茯苓(むくみをとる効果のある生薬)
なども安中散が使われています。
安中散は、桂皮(けいひ)、延胡索(えんごさく)、牡蛎(ぼれい)、茴香(ういきょう)、甘草(かんぞう)、縮砂(しゅくしゃ)、良姜(りょうきょう)という生薬で構成されています。
胃の痛み、胸やけ、胃もたれ、食欲不振などを改善します。冷え性でやせ型、体力のあまりない人に向いている処方です。
消化器系に効く薬は、いろいろありますが、「痛み」を伴う場合には、安中散が良いとされています。
これは、安中散に含まれる延胡索という生薬に関係しています。
エンゴサクは、ケシ科の植物で、生薬に使われるのは塊茎(地下の茎が養分を多量にたくわえて肥大したもの)の部分です。
詳しくは、こちらをごらんください
エンゴサクの成分には、プロトピン、デヒドロコリダリン、テトラヒドロコプチシンなどのアルカロイドと呼ばれる物質が含まれていて、鎮痛効果や胃液分泌を抑える効果があります。
アルカロイドというのは、天然由来の窒素を含む塩基性の有機化合物で、お茶のカフェイン、タバコのニコチン、ケシのモルヒネなどもアルカロイドの一種です。
人間は、植物を食用以外の目的でも、いかに上手に利用してきたかがわかりますね。
必ずしも体に有用・無害なものばかりではありませんが。
まとめます。
安中散は、延胡索が含まれているので、他の生薬との効果も相まって腹痛を伴う胃腸症状に適応があります。
腹痛の強い初期には、芍薬甘草湯との併用が良いと秋葉哲生先生の著書にもあります。
心配事があって、胃がしくしくと痛い時などは安中散の出番です。
女性の生理痛にも効果が期待できます。
ただし、妊娠中に方には、注意が必要な成分も含まれています。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生