今回は、104番の辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)です。

鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症に適応のある漢方薬です。

全部で9種類の生薬で構成されています。

辛夷(しんい)は、モクレン科のコブシの蕾が原料の生薬で鼻の通りを良くする作用があります。

麦門冬(ばくもんどう)、百合(びゃくごう)は、肺に潤いを与えて咳を鎮める働きがあります。

知母(ちも)、升麻(しょうま)はいずれも熱を冷ます作用があります。

枇杷葉(びわよう)は、吐き気や咳を抑える働きがあります。

黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)は抗炎症効果のある生薬の代表です。

石膏(せっこう)は、硫酸カルシウムが主成分で、熱を冷まし、水分を保つ働きがあります。

全体として、適度に水分を保ちながら、熱や炎症を抑えて、鼻の通りを改善させるお薬となっています。

慢性副鼻腔炎の第一選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド療法ですが、効果不十分な場合は、辛夷清肺湯の使用も選択肢の一つになると思います。

ただし、熱を冷ます生薬が多いので、冷え性の方には向きません。

知母は、ユリ科のハナスゲの根茎が原料の生薬です。

からだに潤いを与えて、熱を冷ます作用があります。

辛夷清肺湯には、その他にも果物の枇杷の葉(枇杷葉)やオニユリの鱗茎(百合)など珍しい生薬が含まれています。

ハナスゲの花

   

鼻炎や蓄膿症に適応のある漢方薬を簡単にまとめておきます。

辛夷清肺湯:熱がこもって、慢性的になった鼻づまりに。抗生剤との併用も可。

葛根湯加川芎辛夷(2番):頭痛や肩凝りもあるとき

小青竜湯(19番):冷えがある方で、水様鼻汁が続くとき

荊芥連翹湯(50番):皮膚が浅黒くニキビもあるとき

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

辛夷清肺湯による慢性副鼻腔炎の効果を検討 宇野芳史 漢方医学 Vol.43 No1 2019

辛夷清肺湯が有効であった副鼻腔真菌症の1例 犬飼賢也ら 日東医誌 Vol.72 No2 2021