今回は、119番の苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)です。

効能・効果は、「貧血、冷え性で喘鳴を伴う喀痰の多い咳嗽のあるもの。気管支炎、気管支喘息、心臓衰弱、腎臓病」となっています。

茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、乾姜(かんきょう)、五味子(ごみし)、細辛(さいしん)、半夏(はんげ)、杏仁(きょうにん)の7種類の生薬から構成されており、それぞれの生薬から1文字ずつ取って並べたのが漢方薬の名前になっています。

茯苓は、余分な水をさばく効果のある生薬です。

甘草は、からだのバランスを保つ効果があります。

乾姜は、からだを温める効果が強い生薬です。

五味子、細辛、半夏、杏仁は、いずれも咳や痰を抑える働きがあります。

全体として、冷え性な方の咳、痰、鼻水に効く漢方薬になっています。

この漢方薬は、同じく咳や鼻水を抑える目的で処方される19番の小青竜湯の裏の処方と言われています。

小青竜湯には、桂皮、麻黄というからだの表面を温める生薬が配合されているのに対して、苓甘姜味辛夏仁湯は、体の内部を温める作用が強いとされています。

そのため、少し慢性化した症状にも使用されます。

また、麻黄が入っていないため、妊婦さんや心疾患を抱える患者さんにも安心して処方できるお薬です。

細辛は、ウマノスズクサ科のウスバサイシンまたはケイリンサイシンの根茎が原料の生薬です。

からだを温め、水湿を取り除く働きがあり、水様性の痰がたくさん出るような咳に効果を発揮します。

鎮痛、麻酔作用もあるので、歯や咽頭の痛みにも使用されます。

ウスバサイシンの花 (引用 ツムラメディカルサイト)

100番台の漢方薬は、この苓甘姜味辛夏仁湯同様、以下のように下2桁までの漢方薬の関連処方である場合が多くあります。

1番 葛根湯 ⇒ 101番 升麻葛根湯

7番 八味地黄丸 ⇒ 107番 牛車腎気丸

9番 小柴胡湯 ⇒ 109番 小柴胡湯加桔梗石膏

16番 半夏厚朴湯 ⇒ 116番 茯苓飲合半夏厚朴湯

17番 五苓散 ⇒ 117番 茵蔯五苓散

25番 桂枝茯苓丸 ⇒ 125番 桂枝茯苓丸加薏苡仁

27番 麻黄湯 ⇒ 127番 麻黄附子細辛湯

漢方薬の名前を覚えるはとても難しいので、参考にしてください。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著