今回は、16番の半夏厚朴湯です。

不安やストレスに効くお薬としてドラッグストアやネットでも購入できる漢方薬です。

保険薬としては、不安神経症、神経性胃炎などの病名で処方されます。

気分がふさいで、のどに何かつまっている感じがあったり、動悸、めまい、吐き気を訴える場合が良い適応なります。

当院でも、咽頭や食道の異物感の精査で内視鏡検査をしても全く異常がみられず、ストレスの関与が考えられる方には良く処方しています。

この異物感のことを、漢方用語では、梅干しの種がのどにひっかかった感じと言う意味で「梅核気」と呼びます。

この処方は、半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)、茯苓(ぶくりょう)、厚朴(こうぼく)、蘇葉(そよう)という5種類の生薬が配合されています。

半夏と生姜は、嘔気を抑える基本的な組み合わせで、茯苓は消化管にたまった余分な水分をさばく作用があります。

この3つの生薬を合わせると小半夏加茯苓湯という漢方薬になり、妊娠中のつわりに良く処方されます。

半夏厚朴湯は、小半夏加茯苓湯に厚朴と蘇葉が加わった形になっています。

厚朴は、ホウノキの樹皮が原料の生薬で、嘔気を抑える他に、高ぶった気持ちを落ち着かせる効果があります。

 

蘇葉はシソの葉を乾燥させたものを原料とする生薬で、気持ちを晴れ晴れとする効果があります。

ホウノキの花

ホウノキの葉(朴葉)は殺菌作用があるため、朴葉焼きや朴葉みそにも使われます。

 

半夏厚朴湯は、高齢者の誤飲性肺炎を予防する効果があるという研究成果があります。

これは、私の大学の同級生の岩崎鋼先生が東北大学在籍中にまとめたものです。

岩崎先生は、ご自身の著書の中で、「つかえる感じ」がするときだけでなく、現実に痰が喉につかえていても半夏厚朴湯は使えると述べています。

 

まとめます。

半夏厚朴湯は、ストレスや不安が原因で、咽頭や食道につかえ感がある場合に効果が期待できます。

あまり副作用はありませんが、水分を除く生薬が多いので、脱水状態が強い時は不向きなお薬です。

高齢者の誤飲性肺炎の予防に効果があるという報告もあります。

 

参考:高齢者のための漢方診療 岩崎鋼ら著

活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

自然の中の生薬 ツムラ株式会社版