立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花

 

昔から美しい女性を形容する言い回しです。

また一方で、生薬の使い方を説明している言葉であるという説もあります。

「立てば」は、気が立てばという意味で、気持ちを落ち着かせる効果のある芍薬が良いですよ。

(芍薬は、シャクヤクの根を乾燥させた生薬で筋肉のこりや痛みにも効果があります。)

「座れば」は、長く座っていて下半身の血液が滞ってしまったら、牡丹皮(ぼたんぴ)が良いですよ。

(牡丹皮は、ボタンの根の皮が原料の生薬で、血のめぐりを良くする効果があります。)

「歩く姿は」というのは、歩く姿をシャキッとするには、百合(びゃくごう)が良いですよ。

(百合は、オニユリなどの鱗片が原料の生薬です。)

つまり、芍薬、牡丹皮、百合を摂ると素敵な女性になれますよという事です。

薬用のボタンの花

 

これらの生薬のうち、芍薬、牡丹皮が含まれているのが、25番の桂枝茯苓丸です。

更年期障害や月経痛などの時に良く使われる漢方薬です。

芍薬、牡丹皮の他に桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)、桃仁(とうにん)の全部で5種類の生薬で構成されています。

桂皮と茯苓の組み合わせは、めまいやのぼせを改善するはたらきがあります。

桃仁は、牡丹皮と同じように血のめぐりを解消する生薬です。

血のめぐりが悪く、うっ滞している状態は、漢方的には、瘀血(おけつ)と呼ばれています。

瘀血の存在を確認するには、舌診が有用です。

舌の裏側にある静脈を舌下静脈と言いますが、瘀血があると、舌下静脈が紫色になり拡張する所見がみられます。

「舌下静脈の拡張」の画像を検索すると様々な瘀血の所見の舌の写真が見られますので、ご自分の舌と比較して瘀血がないか確認してみて下さい。

女性では、月経前が一番瘀血の傾向が強くなる時期です。

この時に、頭痛やめまい、肩こり、のぼせ、下腹痛などの症状がひどくなる事は、月経前症候群、あるいは血の道症と呼ばれています。

桂枝茯苓丸は、これらのつらい症状に悩まされている方には、とても頼りになり得るお薬です。

加味逍遥散が出塁率の高い辰巳選手であれば、桂枝茯苓丸は、浅村選手のような一発逆転のホームランを打てる存在と言えるでしょう。

体質に合う方には、長く継続して処方することも可能です。

また、血のうっ滞を改善する効果があるので、痔疾患や打撲傷にも適応があります。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

よくわかる漢方処方の服薬指導  雨谷栄・糸数七重著