今回は、62番の防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。

腹部に脂肪が多いタイプの肥満症で、便秘がちな方に処方される漢方薬です。

「ナイシトール」という名前でも市販されています。

18種類もの多くの生薬で構成されています。

大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)、甘草(かんぞう)は、前回のブログで取り上げた下剤効果の強い承気湯類のひとつである調胃承気湯(ちょういしょじょうきとう 74番)です。

麻黄(まおう)と石膏(せっこう)の組み合わせは、体表の熱と水分を強力にとりこみ尿に排泄させます。

これに、生姜(しょうきょう)、白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)が加わると越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう 28番)から、大棗(たいそう)という生薬を除いた形になります。

越婢加朮湯については、当ブログの記事をご参照ください。

⇒ https://miyacli.jp/%e8%b6%8a%e5%a9%a2%e5%8a%a0%e6%9c%ae%e6%b9%af

薄荷(はっか)、連翹(れんぎょう)、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)は、皮膚疾患に良く配合される組み合わせで発散作用が期待できます。

黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)、滑石(かっせき)は、熱を冷ます働きが強い生薬です。

桔梗は痰を除く作用があります。

当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)は、血を補い、血のめぐりを良くする生薬です。

このように多少補う生薬もありますが、全体として便からも尿からも体表からも、余分なものをどんどん捨てちゃえというお薬ですので、過剰にエネルギーをため込んでしまった身体には、もってこいという訳です。

この漢方薬は、市販にもなっていますが、安易にやせ薬としての使用は危険です。

体力がない方が使うと、さらに消耗してしまいます。

身体を冷やす生薬が多いので、冷え性の方にも向きません。

適応外の方が、漫然と服用すると肝機能障害や間質性肺炎などの副作用が発症することもあり得ます。

肥満の解消は、食事や運動などの生活習慣を見直す事が大切であることは言うまでもありません。

ちなみに、「ビスラットゴールド」という肥満者むけの市販薬は大柴胡湯(だいさいことう 8番)という漢方薬です。

こちらも、当ブログで解説済みですので、ご参照ください。

⇒ https://miyacli.jp/%e5%a4%a7%e6%9f%b4%e8%83%a1%e6%b9%af

この薬もも下剤が入っているので下痢気味の方には、お勧めできません。

 

防風は、セリ科のボウフウの根が原料の生薬です。

皮膚疾患や感冒などの熱性疾患にも使用され、発散・発汗作用や鎮痛・抗炎症作用があります。

ボウフウの花

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

自然の中の生薬 ツムラ株式会社