滋陰降火湯
今回は、93番の滋陰降火湯(じいんこうかとう)です。
のどに潤いがなく、痰が出にくくて咳こむ時に処方させるお薬です。
特に、夜間の頑固な咳に良いとされています。
全部で10種類の生薬で構成されています。
まず、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)は、71番の四物湯から川芎を除いたものです。
血を補い、血のめぐりを改善させる組み合わせです。
陳皮(ちんぴ)には去痰作用があります。
知母(ちも)、黄柏(おうばく)は、熱や炎症を冷ます効果があります。
蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)は、消化管の余分が水分をさばいて胃の負担を減らします。
甘草(かんぞう)は副作用防止やからだのバランス調整のために配合されています。
全体として、血液循環が悪く顔色の浅黒い方が、炎症で体にこもった熱のために、潤いが低下して空咳が続いているような時に対応する漢方薬になっています。
地黄が含まれているために、元々胃腸が弱く下痢しやすい方には注意が必要です。
その場合は、前回紹介した滋陰至宝湯や29番の麦門冬湯が選択されます。
天門冬は、つる性の多年草であるクサスギカズラの根のコルク化した外層を除いた部分が原料の生薬です。
クサスギカズラは、以前はユリ科に属していましたが、現在は、キジカクシ科に分類されています。
身体を潤す滋陰作用が強い生薬です。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著