胃苓湯
今回は、115番の胃苓湯(いれいとう)です。
食あたりや下痢、嘔吐に使用される漢方薬です。
胃の運動を促進する働きのある平胃散(79番)と余分な水をさばいて体外に出す作用の強い五苓散(17番)が合体したお薬です。
前回紹介した柴苓湯にくらべると、炎症を抑える働きの生薬は少ないですが、柴胡や黄芩などの副作用が生じうる生薬が入っていないので、長期的に服用しても安心な漢方薬です。
ただし、芍薬が入っていないので、おなかの痛みが強い場合は、芍薬の入っている漢方薬(芍薬甘草湯、桂枝加芍薬湯など)に変更するか、併用する必要があります。
胃苓湯には、蒼朮(そうじゅつ)と白朮(びゃくじゅつ)の両方が配合されています。
蒼朮は、キク科のホソバオケラの根茎が原料の生薬であり、白朮は、同じくキク科のオケラまたはオオバナオケラの根茎が原料となっています。
どちらも、体の余分が水分を取り除く作用がありますが、蒼朮の方が、やや除水作用が強いのに対して、白朮は消化機能を高める作用が強いとされています。
単独で朮が含まれる漢方薬では、メーカーによって蒼朮、白朮のどちらが使われているかに違いがあります。
例えば、ツムラの五苓散では蒼朮が使用されていますが、クラシエやコタローの五苓散は白朮が使用されています。
漢方の専門医の先生によっては、梅雨時の湿気の強い時には蒼朮を含む五苓散、寒い時期に胃腸の調子を整えたい時は白朮を含む五苓散というように使い分けているそうです。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著