五苓散
新年、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
今日は、令和3年1月2日です。
元旦に飲み過ぎて、文字通り二日酔いになっている方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、二日酔いに効果のあるお薬を紹介します。
17番の五苓散です。
胃腸炎の下痢や吐き気、めまいでも良く処方される漢方薬です。
五苓散は、桂皮(けいひ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、蒼朮(そうじゅつ)の5種類の生薬からなります。
桂皮は、のぼせやめまいを改善し、身体の表面を温める生薬です。
その他の生薬は、いずれも身体に過剰にたまった水分をさばいて本来あるべきところに戻し、尿量を増やす作用があります。
したがって五苓散は、二日酔いで、顔や身体がむくんで、のどが渇いている時には最適のお薬です。
以前に紹介した15番の黄連解毒湯も二日酔いに効能があります。
こちらは身体の熱を冷ます作用の生薬ばかりですので、赤ら顔で、身体が熱く、頭ががんがん痛い時に使用します。
一方、五苓散は顔色が悪く、頭が重くて、めまいや吐き気がひどい時に使います。
このように同じ二日酔いの薬でも適した状態が大きく違いますので注意が必要です。
五苓散は、あまり副作用が問題になる生薬はありません。
しかし、水分を取り除く作用が強いので、消化管や皮膚に水分が多く存在する事が使用の条件になります。
身体全体が脱水に傾いている時には、使えません。
これを見極めるには、舌診が役に立ちます。
舌がからからに乾いていて、吐き気が強くて口から水分が取れない場合は、西洋薬の追加や点滴が必要になります。
最後に、新しい知見を書き加えます。
体の細胞膜に存在し、水を通過させるという特別な性質をもつアクアポリンというタンパク質があります。
1992年にこのいわゆる水チャンネルを発見したピーター・アグレ博士は後にノーベル化学賞を受賞しました。
近年、五苓散は、アクアポリンを抑制する事で水代謝を改善する事が報告されています。
脳出血や脳梗塞後の脳浮腫の改善にも効果があるという研究もあり、世界的に注目されています。
参考
活用自在の処方解説 秋葉哲生著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
自然の中の生薬 ツムラ株式会社版
高齢者のための漢方診療 岩崎鋼ら著
漢方薬の利水作用とアクアポリン 礒濱 洋一郎 ファルマシア 47(12), 1117-1120, 2011