桂枝人参湯
今回は、82番の桂枝人参湯(けいしにんじんとう)です。
胃腸の弱い方の頭痛、動悸、慢性胃腸炎などに効能のある漢方薬です。
全部で5種類の生薬で構成されています。
人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)は、冷え性の方の胃腸炎に処方される人参湯と同じ構成生薬です。
これらに、高ぶった気を下げる効果のある桂皮(けいひ)が加わることによって、頭痛、肩こりを解消し、動悸を鎮める作用が期待できます。
桂皮は、クスノキ科のシナニッケイの樹皮が原料の生薬です。
様々な漢方薬に配合されています。
独特の香りを持ち、シナモンとして食用にもなっています。
漢方の薬効としては、からだの表面を温め、気のながれを改善する働きがあります。
「頭痛の診療ガイドライン2021」には、頭痛に効果のある五つの漢方薬をエビデンスを示して記載されています。
桂枝人参湯もその一つです。
簡単に使い分けをまとめておきます。
桂枝人参湯: からだが冷えて胃腸が弱い方の頭痛に
呉茱萸湯:低血圧で冷え性の方の吐き気を伴う頭痛に
釣藤散:血圧が高めで、のぼせや耳鳴のある中高年の頭痛に
五苓散:天気によって左右されるめまいを伴う頭痛、二日酔いの頭痛に
葛根湯:肩凝りを伴う頭痛、風邪の初期の頭痛に
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本 来村昌紀
頭痛の診療ガイドライン2021 P41-44