今回は、103番の酸棗仁湯(さんそうにんとう)です。

ツムラのエキス剤の効能効果は、「心身がつかれ弱って眠れないもの」となっています。

酸棗仁(さんそうにん)、茯苓(ぶくりょう)、川芎(せんきゅう)、知母(ちも)、甘草(かんぞう)の5種類の生薬で構成されています。

酸棗仁は、精神の興奮を和らげて安眠効果をもたらす生薬です。

茯苓も精神を安定させ、動悸を抑える効果があります。

川芎は、血のめぐりを改善させる補血剤の代表格です。

知母は、からだに潤いを与えて熱を冷ます効果があり、神経の高ぶりを冷ますのに役立ちます。

甘草は、からだのバランス調整のために配合されています。

全体として、疲れているのに眠れない方に対して、血液や水分を補いながら、神経のいら立ちをおさえて穏やかな眠りに導くお薬になっています。

酸棗仁は、クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子が原料の生薬です。

大棗(たいそう)という生薬の原料になるナツメの仲間ですが、ナツメよりも酸味が強い特徴があります。

大棗はナツメの実を使用するのに対して、酸棗仁はサネブトナツメの種子が原料となります。

生薬の名前で「〇〇仁」というのは、植物の種子が原料になっていることを示しています。

鎮静、安眠効果のほかに、汗を止める働きがあります。

サネブトナツメの実

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

ジェネラリストのためのメンタル漢方入門 宮内倫也著

高齢者のための漢方診療 岩崎鋼著