今回は、111番の清心蓮子飲(せいしんれんしいん)です。

効能・効果は、全身倦怠感があり、口や舌が渇き、尿が出ししぶる方の残尿感、頻尿、排尿痛となっています。

全部で9種類の生薬で構成されています。

まず、人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)は、75番の四君子湯の構成生薬ですので、胃腸が弱く体力がない方に向いている処方になります。

さらに、体力を補い、汗を止める黄耆(おうぎ)も加わっています。

黄芩(おうごん)、麦門冬(ばくもんどう)、地骨皮(じこっぴ)、車前子(しゃぜんし)はいずれも熱をさます効果のある生薬です。

蓮肉(れんにく)は、強壮・鎮静作用のある生薬です。

さらに茯苓、車前子は利尿効果もあります。

全体として、体力が弱って、からだに熱がこもり、排尿のトラブルもあり気持ちがイライラしているような時に最適なお薬となっています。

蓮肉は、スイレン科のハスの種子の殻を取り除いたものが原料の生薬です。

滋養強壮作用、鎮静作用の他、尿漏れや下痢を止める効果もあります。

ハスの語源は、果実が蜂の巣に似ていることからハチスと呼ばれ、さらにハスに変化したとされています。

ハスの花

ハスの実

ハスは、泥沼の中で育ち、清らかな美しい花を咲かせる植物であることから、仏教では、「神聖で清らかな心」の象徴としてよく仏様と一緒に描かれています。

そう考えると「清心蓮子飲」というのも絶妙なネーミングですね。

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著