柴陥湯
今回は、73番の柴陥湯(さいかんとう)です。
咳・痰に伴う胸痛に適応のある漢方薬です。
結核の多かった時代には、結核性胸膜炎の症状緩和のためにも使用されていました。
風邪をこじらせて微熱が続く時に、使用される小柴胡湯(しょうさいことう)の7つの構成生薬に黄連(おうれん)と栝楼仁(かろにん)を追加した形になっています。
小柴胡湯は、黄芩(おうごん)と柴胡(さいこ)を含む柴胡剤の代表的なお薬です。
柴胡剤は、両側あるいは片側の肋骨の下の脇腹が張って苦しい状態の「胸脇苦満」を目標に処方されます。
一方、黄芩と黄連を含む漢方薬は、芩連剤(ごんれんざい)と言い、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などの瀉心湯類に含まれる組み合わせです。
芩連剤は、清熱作用を持ち、みぞうちが張って重苦しい状態の「心下痞鞕(しんかひこう)」を目標に処方されます。
柴陥湯は、柴胡剤と芩連剤の両方の性質を兼ね備えたお薬ですので、胸部の重苦しさを強力に取り去る効果が期待できるわけです。
栝楼仁は、ウリ科のキカラスウリ又はオオカラスウリの種子が原料の生薬です。
からだを潤し、咳や痰を鎮める効果があります。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著