今回は、14番の半夏瀉心湯です。胃腸炎症状に良く使用される漢方薬です。

 

半夏(はんげ)、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)の7種類の生薬で構成されています。

 

柴胡剤の代表格である小柴胡湯から柴胡(さいこ)と生姜(しょうきょう)を除いて、代わりに黄連と乾姜が入っている構成となっています。

 

黄連と黄芩の組み合わせは、芩連剤と呼ばれ、身体の奥の方にこもってしまった熱(漢方用語では裏熱と言います)を冷ます作用があります。

 

 

 

柴胡剤が胸脇苦満を解消するために使われるのに対して、芩連剤の目標となる身体所見は、みぞうち部がつかえて硬くなる状態です。

 

これを漢方用語では「心下痞硬」と言います。

 

心下痞硬

 

裏熱を取り去り、身体の外に捨てる働きを持つため、芩連剤を含む処方は瀉心湯類とも呼ばれます。

半夏瀉心湯は、半夏が加わった瀉心湯類という事です。

 

半夏は、サトイモ科のカラスビシャクの球茎の外側のコルク層を除いて乾燥させたものが材料の生薬で嘔気や嘔吐を抑える働きがあります。

カラスビシャク

半夏と乾姜を組み合わせる事によって胃腸をしっかり温め保護しながら、嘔気を和らげる事ができます。

 

しかし、半夏瀉心湯はあくまでも芩連剤の働きで裏熱を取り去る事が主な目的の処方です。

赤味を帯びた舌と口内炎

 

したがって裏熱が存在する事を確かめる必要があります。

 

そのために役に立つのが舌診です。

 

裏熱があるときは、舌は赤身をおびたり、厚い白苔を伴う事があります。

さらに炎症が強いと口内炎を合併する事もあります。

 

実際、半夏瀉心湯は口内炎にも適応があり、ぬるま湯に溶いて口に含ませてから服用するとより効果的です。

 

 

まとめます。

 

半夏瀉心湯は、胃腸炎や舌炎に適応があり、お腹を保護しながら、胃の辺りにこもってしまった余分な熱を冷ます作用があるバランスのとれた漢方薬です。

コロナ禍でストレスが発散できず、胃の辺りがムカムカして、微熱や軟便が続く場合に、極端な冷え性でなければ試してみたいお薬です。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著