芍薬甘草湯
仙台育英高校野球部の皆さん、甲子園優勝おめでとうございます。
真夏の炎天下の中、最後まで集中力を切らさない見事な戦いぶりでした。
日頃の厳しい鍛錬の賜物でしょう。
甲子園のグラウンドは、40度近い気温になっていたと思います。
我々一般人が、同じ環境で少しでも体を動かしたら、すぐに汗がダラダラ出て、息は上がり、しまいには足がつってしまう事でしょう。
足がつった時の激痛は、経験のある方にとっては恐怖でしかありません。
ふくらはぎなど、ストレッチができるところなら、まだ対処の仕様がありますが、足の前面の筋肉などがつったときは、なす術なく、ただひたすらに痛みが過ぎ去るのを待つしかありません。
このような、いわゆる「こむら返り」に役立つ漢方薬が、今回紹介する68番の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)です。
芍薬と甘草という2つだけの生薬のシンプルな構成のお薬です。
漢方薬は、生薬の数が少ないほど、効目はシャープとされています。
芍薬は、筋肉のけいれんを抑える働きがあり、甘草は、脱水を改善しからだのバランスを整える生薬です。
この薬は、1800年以上前の中国の後漢の時代に編纂された「傷寒論」という医学書が原典で、すでに足が痙攣した時に使うと効果があると記載されています。
運動に使われる横紋筋ばかりでなく、消化管を構成する平滑筋の痙攣も抑えるので、胃痙攣などによる腹痛にも効果があります。
したがって緑内障や前立腺肥大があって抗コリン薬(ブスコパンなど)が使えない方の腹痛の対応にも重宝されます。
尿管結石の痛みや肋間神経痛にも応用可能です。
甘草の含有量が多いので、甘草の副作用である低カリウム血症やむくみ、血圧上昇には十分に注意する必要があり、継続して服用するよりは、頓服の方が安全です。
甘草は、多くの漢方薬に使用されている生薬で、ウラルカンゾウあるいはスペインカンゾウの根が原料となります。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
診断と治療 vol.99-no.5 2011 753-758 明日の診療を漢方にいかす