大柴胡湯
今回は、8番大柴胡湯です。
8番から12番は柴胡(さいこ)という生薬の入っており、いわゆる柴胡剤と呼ばれるシリーズです。
柴胡はセリ科のミシマサイコの根を乾燥させたものを原料とする生薬です。
両側の胸部から肋骨の下の部分が重苦しく感じる状態を漢方の専門用語で胸脇苦満と言います。
身体をめぐっているエネルギーが停滞しているために現われる症状とされています。
柴胡剤は、この胸脇苦満を解消する働きがあるとされています。
大柴胡湯は柴胡の他に半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、枳実(きじつ)、生姜(しょうきょう)、大黄(だいおう)という生薬で構成されています。
身体に溜まった熱をさまし、外に出す作用が強い生薬が多いので、便秘がちで、体力がある方に適したお薬です。
このように漢方薬は、患者さんの体力に合わせて処方するお薬を選ぶ必要があります。
体力が有り余っている状態を実症、体力が足りない状態を虚証と言います。
いわゆる虚実という考え方です。
実証であれば瀉す(下す)、虚証であれば補うという鉄則があります。
これを間違えると身体は良い方には向かいません。
また、東洋医学では中庸という概念が重要視されています。
その人個人の調子のよい状態の事です。
例えば、宮城が誇るエンターテイナーであるサンドウィッチマンさんを思い浮かべてください。
私も大好きな芸人さんです。
伊達さんも富澤さんも非常に体格がよろしいですが、全然不健康なイメージはありません。
ほとんど毎日のようにテレビに出て、みんなを笑顔にさせてくれます。
今の状態がお二人にとって「中庸」なのだと思います。
逆に痩せていても元気な人もいます。
西洋医学で標準体重とかBMIなどで評価する考えとは根本的に違います。
漢方薬は、その人の調子の良い状態の近づけるように処方するのが基本なのです。
ただし、本人が調子が良いと感じていても、血圧が高かったり、肝機能が悪いのでは困ります。
診察や健診で客観的評価も必要となります。
西洋医学と東洋医学の良いところを取り入れて、総合的にみていく必要があります。
まとめます。
大柴胡湯は、体力のある便秘がちな実証の人に適したお薬で、胸脇苦満の解消を目標に処方します。
適応症として胆石症、肝機能障害、高血圧、神経症などがあります。
しかし、体力のない方や下痢気味の人が病名だけで服用するのは注意が必要です。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲夫著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著