切紙~鑑別診断
44番の漢方薬はないので、戦国時代の漢方医の曲直瀬道三(まなせどうさん)が書いた「切紙」の医師五十七ヶ条の続きです。
今回は、4つ目の「百病可察初受盛甚困危叓」という文を取り上げます。
百病(ひゃくびょう)、初受(はつじゅ?)と盛甚(せいじん?)と困危(こんき?)とを察すべきこと
すみません。漢字の読み方は自信ありません。
初めて起こった急性期の病気なのか、今まさに勢いを増している状態なのか、命の危険がある程の差し迫ったものかを見極めることが必要であると諭しているものと思います。
病気の状態を観察し、鑑別診断をする事の重要性を説いた言葉です。
現代医療でも、病気の鑑別診断は重要視されており、見逃しや優先順位の間違いを避けるために、次の「3つのC」を念頭に置くことが推奨されています。
1 Common 良く遭遇する頻度の多い疾患 : 感冒、胃腸炎など
2 Critical 生命を脅かす可能性のある疾患: 心筋梗塞、脳出血など
3 Curable 治療法がわかっていてすぐに対処可能な疾患: インフルエンザ、低血糖など
現在、新型コロナウイルス感染症が全国的に流行しています。
すでにcommon disease と言ってもよいほどの拡がりですが、治療法も確立していないのでcurableとは言い切れません。
そして、criticalになるかどうかの判断が極めて困難です。
鑑別診断の3つのCのいずれにもはっきりと当てはまらないので、世界中の医師たちが困惑し、社会を恐怖に陥れているのです。
先日は、当院のスタッフとともに、太白区の集団接種を担当しました。
9月の日曜日も2回当番があります。
今の状況をワクチンなどで何とか乗り切り、早くcurableな疾患と言えるような治療体制が構築できることを切に願います。
参考
近世漢方医学集成4 曲直瀬道三 大塚敬節ら編集
師語録 曲直瀬道三流医学の概要 小山誠次著