甘麦大棗湯
今回は、72番の甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)です。
適応症は、夜泣きやひきつけとなっていますが、成人でもヒステリー発作やあくびが多いなどの症状に応用されます。
甘草(かんぞう)、小麦(しょうばく)、大棗(たいそう)の3つの生薬で構成されています。
いずれも甘味のある生薬ですので子供でも飲みやすい漢方薬です。
甘草は、からだのバランスを整え、急迫を抑える働きがあります。
小麦は、からだの熱をゆるやかに冷まして、精神を安定さる効果があります。
大棗も精神安定作用があり、胃にもやさしい生薬です。
甘麦大棗湯は、五臓論では、「心(しん)」の気の失調を改善する薬とされています。
心は、血液の循環ばかりではなく、精神活動や思考活動などの脳の機能も含まれています。
「夜泣き」に適応のある漢方薬では、他に54番の抑肝散があります。
こちらは、「肝(かん)」の気の高ぶりを抑えるお薬です。
抑肝散は、ギャーギャーとうるさく泣く夜泣きに良いと言われています。
一方、甘麦大棗湯は、ヒイヒイと悲しそうに泣く子どもの夜泣きに適しています。
小麦は、イネ科コムギの種子が原料の生薬です。
パンやパスタなどの食用にする小麦と同じです。
鎮静・安眠作用があり、「気」を補う働きもあります。
「元気ですか~」
先日亡くなったアントニオ猪木さんの決め台詞です。
東洋医学では、生まれつき蓄えられている気を「先天の気」、食事や呼吸で取り入られる気を「後天の気」と言い、両方を合わせた気を「元気」と呼びます。
「元気があれば何でもできる」
確かにその通りです。
逆に元気がないと静かに眠ることさえ、できなくなってしまうのです。
猪木さんには、子どもの頃から元気をもらいました。
ご冥福をお祈り致します。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
東洋医学 基本としくみ 仙頭正四郎監修
現代人のための処方解説 甘麦大棗湯 井上淳子 漢方と診療 Vol.6 No.3(2015.10)