今回は、67番の女神散(にょしんさん)です。

何とも、ミステリアスな名前の漢方薬ですね。

主にめまい、のぼせ、月経不順などの症状のある女性に処方しますが、男性に使用することもあります。

江戸末期から明治にかけて活躍した浅田宗伯という漢方医が命名し広めたお薬です。

全部で12種類の生薬で構成されています。

人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)あるいは白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)は、体力、気力を補う生薬です。

当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)は血を補い、血のめぐりを良くする組み合わせです。

黄芩(おうごん)、黄連(おうれん)は、熱を冷ます作用があり、鎮静効果が期待できます。

桂皮(けいひ)、香附子(こうぶし)、丁子(ちょうじ)、檳榔子(びんろうじ)、木香(もっこう)は、良い香りで気分を晴らす効果があります。

桂皮には、のぼせを改善する働きもあります。

全体として、適度に熱を冷まし体力を補いながら気分を晴らして、めまいやのぼせの症状を軽くしていくお薬となっています。

産後の体調不良にも応用されます。

女神散と同じような効用を持つものとして24番の加味逍遙散(かみしょうようさん)があります。

加味逍遙散についてはこちらをご覧ください。→ https://miyacli.jp/%e5%8a%a0%e5%91%b3%e9%80%8d%e9%81%99%e6%95%a3

この二つの漢方薬の使い分けは難しいのですが、戦後の漢方医療の第一人者である大塚敬節先生は、「来るたびに違うことを言うのは加味逍遙散、いつも同じことを言うのは女神散」と教えていたそうです。

檳榔子はヤシ科のビンロウの種子が原料の生薬です。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

外来臨床での漢方薬の選び方使い方 小野真吾著

新装版 漢方医学 大塚敬節著 創元社

血の道症に対し、女神散が有効と考えられた10症例の臨床的検討 森瑛子 花輪壽彦他 日東医誌 Vol.71  No.2 121-126,2020