今回は、105番の通導散(つうどうさん)です。

中国の明の時代に書かれた「万病回春」という医学書に記載されている漢方薬です。

保険適応としては、「比較的体力があり下腹部に圧痛があって便秘がちな方の月経不順、月経痛、更年期障害、腰痛、便秘、打撲、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)」となっています。

全部で10種類の生薬で構成されています。

紅花(こうか)と蘇木(そぼく)は、血液のうっ滞(漢方用語では瘀血(おけつ)といいます)を強力に解消する生薬です。

当帰(とうき)は、血を補い、血のめぐりを改善させる生薬です。

大黄(だいおう)と芒硝(ぼうしょう)は、強力な下剤効果がある組み合わせです。

枳実(きじつ)、陳皮(ちんぴ)、厚朴(こうぼく)は、気のめぐりを良くする働きがあります。

木通(もくつう)は、利尿効果、鎮痛効果を有する生薬です。

甘草(かんぞう)は、水分バランス調整のために配合されています。

通導散は、昔は、むち打ちの刑に処された囚人を救命するために使われたと言われています。

原典にも「跌撲(てつぼく)傷損きわめて重く、大小便通ぜず、すなわち瘀血散ぜず、肚腹膨張し、心腹を上り攻め、悶乱して死に至らんとする者を治す。先ずこの薬を服し、死血、瘀血を打ち下し、然して後に方に(まさに)補損薬を服すべし。」とあります。

要するに、打撲などの外傷で瀕死の重傷の人を助ける強力な薬ですが、体力も削ってしまうので漫然と使用せずに、体力を補う薬(補中益気湯四君子湯など)を追加しなさいということです。

紅花は、キク科ベニバナの花弁が原料の生薬です。

血流を改善する働きがあり、月経痛や打撲痛などに用いられます。

古くから口紅や染料の原料としても利用されてきました。

また、ベニバナの種子から取れる油は、サフラワー油として食用にもなっています。

ベニバナの花

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

ジェネラリストのためのメンタル漢方入門 宮内倫也著