今回は、39番の苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)です。

めまいやふらつきなどの症状に良く処方されるお薬です。

茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)の4種類で構成されています。

桂枝は、他の生薬の組み合わせによって様々な役割を担う生薬です。

この漢方薬では、気(からだをめぐるエネルギーのようなもの)が首から上に滞ってしまう、いわうる「のぼせ」を改善する目的で含まれています。

茯苓と朮は、いずれも水分を体外に出す利水作用がある生薬です。

甘草は、胃腸を整え、脱水になりすぎないようにする働きがあります。

漢方の考えでは、めまいは、首から上の気や水の滞りによって引き起こされると考えられています。

苓桂朮甘湯は、この気や水のバランスを整える事で、めまいなどの症状を改善するわけです。

甘草は、マメ科のウラルカンゾウやスペインカンゾウの根を乾燥させたものが原料の生薬です。

漢方薬の約7割に含まれている重要な生薬です。

砂糖の約50倍の甘さを有するグリチルリチンという物質が主成分です。

グリチルリチンは、西洋薬でも使用されており、強力ミノファーゲンCという注射薬やグリチロンという内服薬があります。

慢性肝疾患やじんましんなどの治療に用いられています。

グリチルリチンには、高血圧や低カリウム血症、むくみなどの副作用が起こる事があります。

これらは、副腎から分泌される生理的ホルモンであるアルドステロンが過剰に働いた時と同じ状態であるので偽性アルドステロン症と呼ばれています。

アルドステロンについては、当ブログの「柴胡加竜骨牡蛎湯」の記事をご参照下さい。

どのような方が偽性アルドステロン症を起こしやすいかは解明されていません。

したがって、甘草を含む漢方薬を長期的に服用する場合は、血圧の上昇や足や顔のむくみ、低カリウム血症に伴う手足の脱力などの症状に注意が必要です。

一度、偽性アルドステロン症を起こした場合は、残念ながら甘草の入った薬はあきらめざるを得ません。

甘草を 甘くみたら いカンゾー。

「ダーウィンが来た」のひげ爺みたいなギャクでまとめてみました。

ウラルカンゾウの花

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方治療のファーストステップ 松田邦夫・稲木一元著