今回は、110番の立効散(りっこうさん)です。

歯痛や抜歯後の疼痛に保険適応のある漢方薬です。

江戸時代に書かれた医学書の「衆方規矩(しゅうほうきく)」に「歯芽痛んで忍び難い時」に処方する薬として記載されています。

「立ちどころに効果が表れる」というのが、名前の由来とされています。

細辛(さいしん)、升麻(しょうま)、防風(ぼうふう)、竜胆(りゅうたん)、甘草(かんぞう)の5種類の生薬で構成されています。

細辛、防風、升麻は、いずれも体表の痛みを発散させる効果がありますが、中でも細辛は麻酔作用を持つ生薬として知られています。

竜胆は、熱を冷ます効果があり、甘草はからだのバランスを整え、痛みを緩和する働きがあります。

お湯に溶かしてしばらく口に含んでから飲み込むようにすると効果的と言われています。

細辛は、ウマノスズクサ科のウスバサイシンの根や根茎が原料の生薬です。

水湿を取り除き、咳を抑える働きもあるので、鼻水が続くときに処方される19番の小青竜湯にも含まれています。

からだを温め、局所麻酔効果もあるので、冷え性の方の咽頭痛に処方される127番の麻黄附子細辛湯にも含まれています。

ウスバサイシン

その他の歯科口腔外科領域疾患に適応のある漢方薬をまとめておきます。

*口内炎

14番 半夏瀉心湯 胃腸炎に合併する口内炎に有効

120番 黄連湯 反復する口内炎に効果あり

*口渇やドライマウス

29番 麦門冬湯 空咳にも有効

34番 白虎加人参湯 熱中症にも応用される

*顎関節痛

1番 葛根湯 筋肉のこわばりを改善する

18番 桂枝加朮附湯 冷え性で関節痛もある時

*歯周病

122番 排膿散及湯 患部が化膿している時

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著

口腔領域における漢方治療 領域別入門漢方医学シリーズ 王宝禮著

漢方 私のこだわり処方 立効散 渡辺秀司 メディカル朝日 2012 12月号

根尖性歯周炎に漢方薬が有効であった1例 日本東洋医学会雑誌 vol.74No.3  243-246 2023