仙台の日差しも徐々に強くなってきました。

この時期は、身体が熱さに慣れていないため、熱中症のリスクが高くなります。

今回、紹介する34番の白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)は、軽い熱中症になった時に頼りになる漢方薬です。

熱中症ばかりではなく、「口が渇いて体がほてる」という症状を目標に使用します。

構成生薬は、石膏(せっこう)、知母(ちも)、甘草(かんぞう)、人参(にんじん)、粳米(こうべい)の5種類です。

石膏と知母は、身体にこもった熱を冷ます作用があります。

甘草は、身体の水分を保持し、バランスを保つ働きがあります。

人参は、水分や気力を補う作用の他にみぞおちのつかえ感をとる作用があります。

粳米は、うるち米の玄米が原料の生薬です。

体液の喪失を防ぎ、口渇を止め、体を元気にする作用があり、以前に紹介した空咳に効果のある麦門冬湯にも入っています。

うるち米

 

白虎加人参湯は、中国の伝説の聖獣の1つである白虎が名前の由来となっています。

麒麟を守る四神が、青龍、朱雀、白虎、玄武であり、それぞれ東、南、西、北を守る守護神です。

季節で言えば、順番に春、夏、秋、冬であり、色では、青、赤、白、黒になります。

万物の元素である木、火、金、水にも対応しています。

さらに生薬の色から青→麻黄、赤→大棗、白→石膏、黒→附子がそれぞれを象徴している生薬になります。

小青竜湯は麻黄が含まれるための命名であり、真武湯(別名玄武湯)は附子が含まれているための命名です。

そして白虎加人参湯は、白い生薬の石膏が含まれているための命名です。

 

戊辰戦争の悲劇として語りつがれている会津藩の白虎隊も、四神の白虎が由来です。

幕末において会津藩の軍隊は、4つの部隊で編成されていました。

朱雀隊:18歳~35歳 正規軍の主力部隊

青龍隊:36歳~49歳 国境の防衛隊

玄武隊:50歳以上の予備隊

白虎隊:16歳~17歳の少年兵の予備隊

本来、予備隊であった白虎隊は、劣勢であった戦争に駆り出され、犠牲となったのです。

 

会津では、藩主であった保科氏・松平氏のもとで御薬園(おやくえん)などで朝鮮人参を中心に薬草栽培が盛んに行われていました。

現在も会津医療センターの漢方医学研究室で、漢方薬の研究や生薬の栽培が受け継がれています。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著