今回は、40番の猪苓湯(ちょれいとう)です。

血尿や残尿感などの泌尿器系のトラブルに良く使われるお薬ですが、下痢、血便などの消化器症状にも適応があります。

猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、阿膠(あきょう)、滑石(かっせき)の5種類の生薬で構成されています。

猪苓、茯苓、沢瀉は、からだの水分をさばき、尿量を増やす働きがあります。

下痢や吐き気などに処方される五苓散でも中心的な役割を担う組み合わせです。

阿膠は、ロバの皮を煮込んでつくるニカワが原料の生薬で、止血効果があります。

滑石は、ケイ酸アルミニウムを主成分とする天然鉱石で、利尿作用のほかに、膀胱、尿道、腸管などの炎症を抑える効果があります。

尿管結石は、心筋梗塞、群発頭痛と並んで3大疼痛の一つとされています。

私も、研修医時代に同僚と岩手県の安比高原へ泊まりでスキーに行った時に、初めての発作を経験しました。

宿に泊まった翌日の朝、急に右下腹部に違和感を感じてから、徐々に痛みが強くなり、すぐに我慢の限界を超えました。

同室に泊まっていたY先生を起こし、指圧してもらいましたが、痛みは増すばかり。

ついには、救急車を呼んで、岩手医大の救急外来に向かいました。

救急車の中でも痛みに耐えかね、うなっていましたが車のスピードに揺られて石が膀胱に落ちたのか、急に楽になりました。

激しく騒いでいたのに、急に静かになったので、同乗してくれた普段は冷静沈着なY先生が慌てて私の脈をとり、「センセイ~。ショックになったかと思いましたよ」とつぶやきました。

岩手医大に着いた時には、症状はすっかり落ち着いていましたので、また安比に戻って少しスキーをしてから仙台に帰りました。

若かったんですね。

その後も2回ほど発作がありますが、幸い自然に改善しています。

あの痛みの恐怖は経験した方にしかわからないかも知れません。

猪苓湯は、尿管結石にも処方されますが、痛みの強い時に飲む余裕はありません。

発作が落ち着いてから服用しましょう。

猪苓は、チョレイマイタケの菌核が原料です。

 

チョレイ~ 張本選手頑張れ。

 

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方治療のファーストステップ 松田邦夫・稲木一元著