今回は、6番の十味敗毒湯です。
ニキビや皮膚炎によく使われています。
江戸時代中期に活躍した医師の華岡青洲が考えた処方です。
華岡青洲は、日本ではじめて全身麻酔をしながら乳がんの手術をした医師として有名です。
その妻は、全身麻酔の実験台に自ら志願して視力を失いました。
「華岡青洲の妻」という小説があり、映画やドラマにもなっています。
十味敗毒湯は、桔梗(キキョウ)、柴胡(サイコ)、川芎(センキュウ)、茯苓(ブクリョウ)、桜皮(オウヒ)または撲椥(ボクソク)、独活(ドクカツ)防風(ボウフウ)、甘草(カンゾウ)、荊芥(ケイガイ)、生姜(ショウキョウ)という10種類の生薬で構成されています。
桜皮は、ヤマザクラの樹皮であり、撲椥は、クヌギの樹皮です。
華岡青洲は桜皮を使用していましたが、後に浅田宗伯という名医が、撲椥に変更した処方を提唱しました。
現在は、クラシエやコタローの十味敗毒湯には、桜皮が用いられ、ツムラは撲椥を使用しています。
どちらの生薬も排膿や解毒の効能があります。
このように漢方薬は、メーカーによって配合される生薬が多少違う場合が珍しくありません。
桜皮には、さらに女性ホルモンであるエストロゲンの生成を促進する作用があると報告され、注目されています。

ヤマザクラ  (c) photolibrary

また、十味敗毒湯には、独活という生薬が入っています。
ツムラのエキス剤では、十味敗毒湯以外には用いられていない生薬ですので、ここで触れておきます。
独活は食用にもなるウドの根茎で解熱・鎮痛作用に加えて除湿効果があります。

独活(ウド) (c) photolibrary

市販薬で独活葛根湯というのがありますが、こちらは四十肩や五十肩に効くお薬です。
まとめます。
十味敗毒湯は、10種類の生薬がバランス良く作用し、皮層の熱や湿気を取り、膿やかゆみを伴う皮膚の病気に効果のある処方です。
参考文献:桜皮及び桜皮成分のエストロゲン受容体結合能の評価: 薬学雑誌 2010  遠野弘美