今回は、7番の八味地黄丸です。

足腰の痛みやしびれ、頻尿などの尿のトラブルに効く薬です。
構成生薬は、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、沢潟(たくしゃ)、扶苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんび)、桂皮(けいひ)、附子(ぶし)の8種類です。
八味地黄丸は、アンチエージング効果のある漢方薬と言われています。
その機序を知るためには、「腎」という概念を理解しなければなりません。
単純に腎臓という臓器をさすものではありません。
漢方の古典的な考え方で、五臓というのがあります。
すなわち、肝、心、脾、肺、腎です。この5つのバランスで人の身体が機能しているという考え方です。
それぞれの機能が崩れると下図のような身体の不調が起こり、さらに相互に影響を及ぼします。
 
腎には、精と呼ばれる生命エネルギーの結晶のようなものが蓄えられているとしています。
精には、親から引き継がれた先天の精と、食事や休養によって補われる後天の精があります。
全身の精気はへその下の下腹部の丹田に集められます。
腎の働きが弱まり、いわゆる腎虚という状態になると、丹田の力も弱まり、触るとやわらかく凹んでしまうようになります。
これを漢方用語で「小腹不仁」といいます。
山崎光夫の小説、「曲直瀬道三 乱世を医やす人」では、織田信長や豊臣秀吉の丹田の強さに医師たちが驚く場面が度々出てきます。
半沢直樹も丹田強そうですね。そうでなければ、あれだけ激しく仕事をした後に剣道なんてできません。
花ちゃんの手料理も効いているのでしょう。

八味地黄丸には腎虚になった状態を改善させる効果があります。
その中心的役割を果たす生薬が地黄です。
地黄はゴマノハグサ科の多年草であるアカヤジオウやカイケイジオウの根を乾燥させたもので、身体を潤し、栄養を巡らせる働きがあります。
イチローがコマーシャルをやっている「ユンケル黄帝液」にも配合されています。
ただし、胃腸の弱い方には注意が必要な生薬です。
 アカヤジオウ
まとめます。
八味地黄丸は、50歳を超えて、先天の精が衰え、疲れやすくなってきたら、お勧めしたい漢方薬です。
しかし、薬に頼るばかりではいけません。
疲労がたまっている時に徹夜をしたり、激しい運動をしすぎると、たちまち腎虚に陥って、大きな病気につながってしまう可能性があることを忘れてはなりません。
腎は、よく機械や車のバッテリーに例えらえます。
スマホもバッテリーが切れると真っ暗になってしまいます。
最近の機種は、バッテリーが切れかかると節約モードに切り替わります。
人の身体も腎虚になりかかった時には、節約モードに変えなければなりません。
参考: 小説 曲直瀬道三 乱世を医やす人 山崎光夫著
    漢方診療のレッスン 花輪壽彦
    活用自在の処方解説 秋葉哲生
    自然の中の生薬  ツムラ株式会社版