今回は、15番の黄連解毒湯(おうれんげどくとう)です

黄連は、キンポウゲ科の植物で、根茎が生薬の原料になります。

日本産では主にセリバオウレンが使用され、兵庫県(丹波)などが産地になっています。

セリバオウレンの花

 

黄連解毒湯も、前回の半夏瀉心湯と同様に、黄芩(おうごん)と黄連(おうれん)が入っている芩連剤の一つです。

その他に、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)という生薬が配合されています。

この4つの生薬は、いずれも身体の熱を冷ます清熱作用のある生薬です。

そのため、身体に冷えがある場合は適しません。

対象になるのは、

*血圧が高めで赤ら顔の方

*暑がりでいつもお風呂はぬるめのお湯を好む方

*じんましんやアトピーがありかゆみを訴える方

*頭痛がありイライラすることが多い方  

などです。

さらに、鼻出血や二日酔にも適応がある珍しいお薬です。

 

黄芩は、胸から上の部分(漢方用語では上焦といいます)を冷まし、

黄連は上腹部(中焦)の熱を冷まし、

黄柏は臍から下(下焦)の熱を冷まします。

そして山梔子は、クチナシの果実を乾燥させたものですが、身体全体を冷ます作用があります。

 

 

近年、山梔子を含む漢方薬の長期服用で腸間膜静脈硬化症という病態が発症する事が問題となっています。

これは、腸間膜静脈が硬くなり、石灰化が生じるために起こる血流障害が原因で慢性的に腹痛、下痢、嘔吐などの症状をきたす疾患です。

大腸の狭窄のために手術が必要になる場合もあります。

黄連解毒湯もアトピー性皮膚炎などの診断で長期に服用する場合がありますので注意が必要です。

 

腸間膜静脈硬化症の内視鏡像 Wikipediaより引用

 

まとめます。

黄連解毒湯は、熱を冷ます作用のある4種類の生薬からなる漢方薬で、比較的体力のある方の高血圧、めまい、皮膚炎などに用います。

長期服用(おおむね5年以上)では、腸間膜静脈硬化症の発症に気をつける必要があります。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

自然の中の生薬 ツムラ株式会社版

漢方専門外来の長期間通院患者における特発性腸間膜静脈硬化症罹患者に関する検討 渡辺哲郎他 日本東洋医学雑誌 2016  Vol.67 No.3