今回は、54番の抑肝散(よくかんさん)です。

文字通り、肝の高ぶりを抑える薬という意味です。

「肝」は五臓の一つで、気(からだを支える生命エネルギー)の流れを調整したり、血や栄養を蓄えたりする機能をつかさどる機関とされています。

その機能の調子が悪くなると情緒不安定になり、自律神経の乱れや不眠を引き起こすことになります。

日本語でも情緒が安定している人のことを「肝が据わっている」と表現することがありますね。

 

五臓の不調は、様々な病態の原因になり、相互に影響を受けます。

 

抑肝散は、釣藤鈎(ちょうとうこう)、柴胡(さいこ)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、甘草(かんぞう)という7つの生薬で構成されています。

釣藤鈎は、脳の血管拡張作用があり、精神を安定させたり、痙攣を抑える働きがあります。

柴胡は、抗炎症作用や鎮静作用を持つ生薬です。

茯苓と朮は水をさばく生薬です。

茯苓には、さらに動悸を抑えて気持ちを落ち着かせる効果が期待されます。

川芎と当帰は血のめぐりを改善する働きがあります。

甘草は全体を調整する役割があります。

元々は、子どもの夜泣きに良く使用されていたお薬ですが、認知症の患者さんの興奮や徘徊に効果があるという臨床研究(参考①②)があり、最近は高齢者に頻用されています。

前回の疎経活血湯で触れた経絡の観点から見てみましょう

肝に関連のある経絡は、足厥陰肝経(あしけついんかんけい)という経脈です。

頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)というツボは、自律神経を整え、頭痛や目の疲れ、不眠などに効果があるツボとして知られています。

子どもの頭をなでると喜ぶのも関係があるのかも知れないですね。

引用:https://harikyu-jinendo.jp/sozai02.html

 

茯苓は、サルココシカケ科のマツホドの菌核が原料の生薬です

参考:

①Iwasaki K.et al. J Clin Psychiatry.66:248-252.2005

②高齢者のための漢方診療 岩崎鋼ら著

活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

基本がわかる漢方医学講義 日本漢方医学教育協議会

漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著