麻杏甘石湯
今回は、55番の麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)です。
使用される4つの生薬の名前を連ねたシンプルな名称となっています。
すなわち、麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、甘草(かんぞう)、石膏(せっこう)です。
喘息などによる激しい咳を抑える時に処方されるお薬です。
石膏は熱を冷ます作用があり、麻黄は気管支拡張作用や鎮咳作用があります。
さらに、この二つを組み合わせによって気道の浮腫を軽減する効果が期待できます。
杏仁も、鎮咳作用や去痰作用があります。
甘草は、脱水になりすぎないようにバランスを保つために配合されています。
麻杏甘石湯の生薬構成は、インフルエンザなどの初期に処方される麻黄湯の桂皮を石膏に入れ替えた格好となっています。
麻黄と桂皮の組み合わせは、体表の強力に温める働きによって汗とともに病邪を発散させます。
一方、麻黄と石膏の組み合わせは、体表や気道の水分を体の奥に引き込み尿として排泄させる働きがあります。
このように麻黄は他の生薬との組み合わせによって全く別な相乗効果を生み出すことができるのです。
杏仁は、バラ科のアンズの種子が原料の生薬です。
アンズの種子に多く含まれる脂肪油は、頭髪油(ポマード)などに使用されます。
脂分を取り去ったものから製造される杏仁水は、古くから咳止めとして使われていますが、アミグダリンというシアン化合物を含むので大量に服用すると副作用が現れる危険があります。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著
自然の中の生薬 ツムラ株式会社
漢方治療のファーストステップ改訂2版 松田邦夫ら著