調胃承気湯
今回は、74番の調胃承気湯(ちょういじょうきとう)です。
普通の体力のある方の腹部膨満感、腹痛、便秘に適応のある漢方薬です。
大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)、甘草(かんぞう)の3種類の生薬で構成されています。
大黄は、西洋薬で便秘に頻用されるセンノシドを含んでおり、強い下剤効果のある生薬です。
芒硝は、硫酸ナトリウムが主成分で腸管内に水分を取り込むことによって便を軟らかくする効果があります。
甘草は、水分バランスを整え、過度に脱水にならないようにするために配合されています。
大黄と芒硝を含む漢方薬は承気湯と呼ばれます。
これに、胃を調える作用のある甘草が加わって、調胃承気湯と名付けられています。
西洋薬で言えば、センノシドと酸化マグネシウムと胃薬の合剤のようなものです。
センノシドは、胃や小腸では吸収されず、ビフィズス菌などの腸内細菌により代謝され、レインアンスロンが生成されます。
この物質が、大腸蠕動運動を亢進させて瀉下作用をもたらすとされています。
大黄には、センノシド以外にタンニン類なども含まれていて、向精神作用や抗酸化作用、腎機能改善作用があることがわかっています。
西洋薬にはないプラスアルファの効果が期待できることが漢方薬の奥深い所です。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著
大黄の向精神作用 西岡五夫 日本東洋医学雑誌 46巻5号 631-644 1996
専門医研修コアカリキュラムと「問題と解説」 日本東洋医学会編