治頭瘡一方
今回は、59番の治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)です。
炎症やかゆみがあり、分泌物の多い皮膚症状に適応がある漢方薬です。
特に、乳幼児の顔や頭の湿疹に使用されます。
全部で9種類の生薬で構成されています。
荊芥(けいがい)、連翹(れんぎょう)、防風(ぼうふう)は、いずれも発散作用があり、皮膚疾患の治療に頻用される組み合わせです。
忍冬(にんどう)は、発散作用に加えて解毒作用が期待できる生薬です。
大黄(だいおう)には下剤効果があり、蒼朮(そうじゅつ)は、水をさばく作用がありますので、新陳代謝を活発にします。
川芎(せんきゅう)と紅花(こうか)は、血液の循環を促す効果があります。
甘草(かんぞう)は全体のバランス調整のために配合されています。
治頭瘡一方に含まれる防風は、前回に紹介した清上防風湯に含まれていた浜防風とは、違う生薬です。
どちらもセリ科の植物の根が原料で発散作用がありますが、浜防風の方が熱を冷ます作用が強いとされています。
全体的にも治頭瘡一方は、温める生薬と冷ます生薬が拮抗しているので、清上防風湯のような強い消炎作用はありません。
忍冬は、スイカズラという植物の葉や茎を原料とする生薬です。
解熱作用や解毒作用があります。
中国でコロナ感染症の治療に良く使われている銀翹散(ぎんぎょうさん)には、金銀花(きんぎんか)という生薬が含まれていますが、こちらはスイカズラの花が原料です。
現在、北朝鮮で新型コロナウイルスの感染が流行しています。
ニュースで、北朝鮮では軽症者に野草のスイカズラを煎じて飲むように推奨していると報じていました。
あながち根拠のない話ではないのかも知れません。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著
【特別寄稿】COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方ver 2 小川恵子 日本感染症学会 2020年4月17日公開