茯苓飲
今回は、69番の茯苓飲(ぶくりょういん)です。
吐き気、胃のつかえ、おなかの張りなどの消化器症状に対して処方する漢方薬です。
茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、枳実(きじつ)、人参(にんじん)、陳皮(ちんぴ)、生姜(しょうきょう)の6種類の生薬で構成されています。
茯苓と朮は余分な水分をさばく作用がある生薬です。
さらに茯苓は、気持ちを落ち着かせる働きもあります。
枳実、陳皮は、消化管の運動を促して胃の負担を減らす効果があります。
人参は、胃のつかえを取る作用と体力を補う作用のある生薬です。
生姜はからだを温め、吐き気を抑えます。
東洋医学では、人間のからだも自然の一部であり、常に変化しているものと捉えるという基本的な考え方があります。
朝と夜、夏と冬、雨の日と晴れの日で、体調は自然に変わっていくものです。
健康であれば、ある程度の環境の変化にも柔軟に対応して病気の発症を防ぎます。
しかし、冷たいものや甘いものを食べすぎたり、お腹を冷やすことを続けていると、消化管の中が洪水状態になってしまい、吐き気や膨満感などの症状が引き起こされてしまいます。
雨の日は気温が下がるのと同じように、胃の中にたまった水分は、からだ全体を冷やしてしまいます。
冷えると、さらに消化管の運動が鈍くなるという悪循環が生まれます。
この悪循環を断ち切るには、まず水分を抜いて、たまったものを掃除し、からだを温めなければなりません。
茯苓飲は、その目的にふさわしい生薬が集められているのです。
もちろん、食べ過ぎに注意して、お風呂や適度な運動でからだを温めるなどの生活習慣を身に付けることが一番重要です。
茯苓はアカマツやクロマツなどの松の根に寄生する真菌(きのこの仲間)の菌核で、マツホド(松塊)とも呼ばれます。
松は神聖な木とされており、その精霊に伏せる存在として伏霊(茯苓)と名付けられたと言われています。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
東洋医学 基本としくみ 仙頭正四郎監修