今回は、56番の五淋散(ごりんさん)です。

市販薬としては「ボーコレン」という名前で、ドラッグストアでも購入できます。

中国医学では、泌尿器系のトラブルを総じて「淋証」と言います。

原因や病態によって、さらに次のように分類されています。

石淋:尿中の不純物が石を形成することによって起こるトラブル

気淋:ストレスなどが原因で起こるトラブル

膏淋:尿が混濁して起こるトラブル

労淋:疲労によって起こるトラブル

血淋:尿に血液が混じるトラブル

五淋散は、この五つのトラブルを解決するお薬という訳です。

全部で11種類の生薬で構成されています。

黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)は炎症を抑える働きがあります。

茯苓(ぶくりょう)、車前子(しゃぜんし)、沢瀉(たくしゃ)、木痛(もくつう)、滑石(かっせき)は利尿作用のある生薬です。

さらに茯苓は精神安定作用があり、他の四つの生薬は抗炎症作用があるとされています。

当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)は血のめぐりを良くする生薬です。

甘草(かんぞう)は、からだの水分バランスを整えるために配合されています。

また、芍薬と甘草は、平滑筋の痙攣をおさえて痛みを和らげる組み合わせです。

全体として、膀胱炎によって熱をともない、頻尿、排尿痛、残尿感などの症状がある場合に使用されるお薬です。

ただし、現代では細菌性尿路感染症の治療の中心は抗生物質であり、五淋散は補助的な役割となっています。

ここで泌尿器系のトラブルに使用される漢方薬についてまとめておきます。

五淋散(56番):熱を伴う尿路感染症に対する第一選択薬。市販薬では「ボーコレン」。地黄が入っているので胃腸の弱い方は注意が必要

猪苓湯(40番);止血作用のある生薬も入っているので、尿路結石などにも頻用される。胃腸の弱い方にも使いやすい。

清心蓮子飲(111番):冷えてトイレが近くなる女性のいわゆる過活動膀胱に使用。市販薬名は「ユリナール」

八味地黄丸(7番):前立腺肥大など加齢に伴う尿のトラブルに。市販薬名は「ハルンケア」

 

滑石は、含水ケイ酸アルミニウムや二酸化ケイ素などからなる天然の鉱物で、水をさばく作用や熱を冷ます作用を持つ生薬です。

滑石 (引用 ツムラメディカルサイト)

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著

症例から学ぶ和漢診療学 寺澤捷年著