今回は、41番の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。

倦怠感や食欲不振の治療でよく処方されるお薬です。

人参(にんじん)と黄耆(おうぎ)という体力や気力を補う生薬が含まれる参耆剤(じんぎざい)の代表的な漢方薬です。

黄耆は、マメ科のキバナオウギの根が原料の生薬です。

筋肉や毛穴を引き締め、だらだらと汗が出るのを防ぐ効果があります。

キバナオウギ

キバナオウギの花と根

 

補中益気湯には、その他に当帰(とうき)、柴胡(さいこ)、升麻(しょうま)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)という生薬が入っています。

当帰は、血のめぐりをよくする働きがあります。

柴胡は、熱や炎症を冷ましてストレスを改善する効果があります。

升麻は、気力を上げる事によって、からだの力が抜けて起こる内臓下垂や脱肛を改善する効果が期待できます。

蒼朮、白朮は水をさばく生薬で、白朮にはさらに体力を補う作用があります。

陳皮、大棗、生姜、甘草は胃の状態を健やかにするために配合されています。

全体として補中益気湯は、感染症の後に微熱やだるさが続いて、食欲がなく気持ち悪い汗をかいているような時には最適なお薬と言えます。

現在、首都圏を中心に新型コロナウイルス感染症の第5波が猛威をふるっています。

気軽に使える特効薬がない中で、漢方薬の有用性を報告する論文の発表も増えてきています。

補中益気湯も、体力、気力を補う作用によって免疫力が高まり、予防効果が期待できる漢方薬の一つとされています。

しかし、免疫力を付けるために最も重要なのは、暴飲暴食を避けた正しい食事、適度な運動、十分な睡眠と休養などのいわゆる養生(ようじょう)である事を忘れてはなりません。

また、養生で体調を整えた状態でのワクチン接種も大切だと思います。

 

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 浅岡俊之著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

【緊急寄稿】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割 渡辺賢治他 日本医事新報社 2020年4月18日発行

【特別寄稿】COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方 小川恵子 日本感染症学会 2020年3月19日