今回は、91番の竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)です。

風邪などの感染症の回復期に、微熱、咳、痰などの症状が長引き、安眠できない場合などに処方される漢方薬です。

全部で13種類の生薬で構成されています。

半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)、茯苓(ぶくりょう)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)は、81番の二陳湯の構成生薬です。

二陳湯は、胃腸が弱い方の嘔気や悪心に適応のある漢方薬ですので、感染症の後の消化器系のトラブルへの配慮がベースになっています。

二陳湯に、竹筎(ちくじょ)と枳実(きじつ)という2つの生薬を加えたものを温胆湯といいます。

この2つの生薬は、鎮静作用があり、不眠やいらいらの解消に役立ちます。

竹筎には、咳や痰を鎮める効果もあります。

麦門冬(ばくもんどう)は、からだを潤し、咳を抑える働きがあります。

柴胡(さいこ)、黄連(おうれん)は、熱や炎症を抑える生薬です。

桔梗(ききょう)は、去痰作用があり、香附子(こうぶし)は、気分をさっぱりさせる効果があります。

人参(にんじん)は、感染症で失われた体力を補うために配合されています。

全体として、感染症で弱ったからだを、食事や睡眠をサポートして体力を回復しながら、咳や炎症を抑えるお薬に仕上がっています。

竹筎は、イネ科の淡竹(ハチク)や真竹(マダケ)の節と節の間の稈(かん)と呼ばれる部分の青い外層をはぎ取り、内層を薄く削って帯状にしたものが原料の生薬です。

肺の熱を冷まして、痰を抑える効果があります。

また、胃の熱を冷まして吐き気を抑える働きもあります。

竹筎 (引用:ツムラメディカルサイト)

夏でも竹林の中は、ひんやりとした清涼感があります。

それで、古代の人は、からだを冷やす効果を期待して竹を生薬として使ってみようと考えたのかも知れません。

竹林

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎編著