今回は、58番の清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)です。

にきびに適応がある漢方薬です。

全部で12種類の生薬で構成されています。

黄芩(おうごん)、黄連(おうれん)、山梔子(さんしし)は、熱を冷ます働きがあります。

薄荷(はっか)、連翹(れんぎょう)、荊芥(けいがい)、浜防風(はまぼうふう)は、いずれも発散作用があり、皮膚疾患の治療に使用される生薬です。

枳実(きじつ)は消化運動促進作用の他に発散作用もある生薬です。

川芎(せんきゅう)は、血のめぐりを良くする働きがあります。

甘草(かんぞう)は、全体のバランスを整えるために配合されています。

白芷(びゃくし)、桔梗(ききょう)は、いずれも去痰作用がありますが、さらに白芷には鎮痛効果、桔梗には排膿効果が期待されます。

全体として、顔色が赤くのぼせ傾向のある方のにきびなどの皮膚疾患に使用されますが、体表に熱を伴う頭痛や咽頭痛などの感冒症状の緩和にも応用ができるお薬です。

新型コロナウイルス感染症の症状の緩和に対して様々な漢方薬の有効性が報告されています。

中国医学では、銀翹散(ぎんぎょうさん)というお薬が良く使われています。

構成生薬は、金銀花(きんぎんか)、連翹(れんぎょう)桔梗(ききょう)、牛蒡子(ごぼうし)、荊芥(けいがい)薄荷(はっか)、豆鼓(とうし)、竹葉(ちくよう)、芦根(ろこん)、甘草(かんぞう)であり、青文字の生薬は、清上防風湯にも共通に含まれています。

銀翹散は、日本の医療保険で処方できるお薬ではありませんが、市販では流通しています。

漢方医の加島雅之先生の著書には、銀翹散を医療用漢方製剤のエキス剤で代用する場合は清上防風湯が最も適合すると書かれています。

感冒やコロナ感染の初期で、強い寒気を訴えている場合は、身体の表面を温めて発散させる葛根湯や桂枝湯が選択されますが、体表に熱感を伴う病態(漢方では温病といいます)では、逆に身体を冷まして発散させる銀翹散や清上防風湯が適していると言われています。

同じウイルス感染でも病態によって使い分けるのが、漢方薬の奥深い所であり、難しい所でもあります。

 

[レンギョウの花〕 連翹は、レンギョウの果実が原料の生薬です。

参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著

漢方診療のレッスン 花輪壽彦著

漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著

漢方薬の考え方、使い方 加島雅之著

症例から学ぶ和漢診療学 寺澤捷年著

【特別寄稿】COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方ver 2 小川恵子 日本感染症学会 2020年4月17日公開