抑肝散加陳皮半夏
今回は、83番の抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)です。
この漢方薬は、江戸時代に大阪で活躍した漢方医の北山友松子(きたやまゆうしょうし)が考案したと伝えられています。
54番の抑肝散に81番の二陳湯の構成生薬である陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)が加わった形になっています。
ちなみに、二陳湯は、陳皮と半夏が陳旧なものほど優良であることが名前の由来です。
全部で9種類の生薬で構成されています。
釣藤鈎は、精神を安定させ、筋肉のけいれんやひきつれを抑える働きがあります。
脳の血管拡張作用もあるとされています。
柴胡(さいこ)は解熱、鎮静作用があります。
茯苓(ぶくりょう)は余分な水分を排し、動悸を抑える効果があります。
朮(じゅつ)にも水をさばく効果があります。
川芎(せんきゅう)と当帰(とうき)は、血のめぐりを改善する組み合わせです。
甘草(かんぞう)は、からだのバランス調整のために配合されています。
陳皮と半夏は、胃腸の調子を整え、吐き気を抑える効果があります。
全体として、ストレスが長引いていらいらや不眠が続き、食欲や元気がなくなったような場合に処方されるお薬です。
抑肝散や抑肝散加陳皮半夏は、小児の夜泣きにも適応があります。
中国の古典には、「母子同服」という言葉があり、親子で服用する事を勧める記載があります。
古い時代にも子育てによるストレスを配慮した医療がなされていたのですね。
釣藤鈎は、アカネ科のカギカズラのとげの部分を乾燥したものが原料の生薬です。
血圧降下作用、血管拡張作用、精神安定作用があるとされています。
参考:活用自在の処方解説 秋葉哲生著
漢方診療ハンドブック 桑木崇秀著
よくわかる漢方処方の服薬指導 雨谷栄・糸数七重著
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著
ジェネラリストのためのメンタル漢方入門 宮内倫也著
働くひとのためのメンタルヘルスと漢方 伊藤隆著
高齢者のための漢方診療 岩崎鋼著